観光協会・自治体・地域のご担当者、そして動画に予算を投じる決裁者の方へ
バズは、“知ってもらう”までしか運んでくれない
かつて、観光動画のゴールは「バズ」でした。フラッシュモブ、温泉県おおいた、登米のおばあちゃん——
SNS のタイムラインを駆け抜ける、あの力技です。
否定はしません。むしろ、名前を知られていない地域にとって、バズは今でも有効な“入口”です。
まず存在を知ってもらわなければ、行き先の候補にすら入れない。その最初の扉を、一気にこじ開けてくれるのがバズの力です。
ただ——ここからが本題です。バズは、“知ってもらう”ところまでしか運んでくれません。
再生数は伸びた。SNS でも少し話題になった。でも、来訪にはつながった実感がない。「面白い動画だったね」で終わってしまう。
この、数字は動いたのに心は動いていないという手応えのなさに、心当たりはないでしょうか。
魅力は、まだ何も伝わっていないのです。
今回は、その先——“行きたくなる”動画のつくり方の話をします。
なぜ「バズ」だけでは、“行きたい”にならないのか
理由は、はっきりしています。バズは「驚き」で人の足を止める手法だからです。驚きは強い。
でも、一過性です。人の記憶に残るのは「面白かった」という感情であって、「行きたい」という欲求ではありません。
驚かせることと、来訪の意思をつくることは、まったく別の仕事なのです。
前回の「尺」の記事でもお伝えしたとおり、認知(知ってもらう)と誘客(行きたくさせる)は、役割が違います。
バズは認知の一撃。しかし、そこで満足して止まってしまうと、次——実際に足を運んでもらう段——へ橋が架からない。
知名度のない地域が、バズで名前を売るのは正解です。問題は、その先を用意しているかどうか。
ここから、その“先”を設計していきます。
“行きたくなる動画”に共通する、たった 1 つの原理
手法はこのあと 7 つ挙げます。でも、その前に。効く動画のすべてに共通する原理を、先に理解ください。
それは、
見た人が「これは、自分の週末だ」と、自分を重ねられること。
自己投影、と言い換えてもいい。名所を上から順に映すのではなく、「そこにいる自分」を想像させる。
景色の羅列ではなく、“体験の疑似体験”を渡す。これができた 瞬間、視聴者の中で動画は「他人事の映像」から「自分の予定」に変わります。
行きたくなる、とは——見た人が、自分がそこにいる未来を、勝手に思い描いてしまうということ。
7 つの手法は、すべてこの一点に向かう、別々の道です。
行きたくなる動画・7 つの手法
ここが本編です。「オリジナルドラマがいいのか?」——よく聞かれますが、答えは「場合による」。
ドラマは強力な一手ですが、万能ではありません。地域の知名度・予算・尺によって、最適な手法は変わります。
まずは選択肢を、正直に横並びで見てください。
① ドキュメンタリー型 ── 人と営みを追う
作り手や暮らす人の“リアル”を追いかける。登米のおばあちゃんの延長線上ですが、より「物語」に寄せていく形です。
知名度がいらず、共感の力が強い。 派手さはなくとも、深く刺さります。
尺:2〜4 分/コスト:中/向く地域:語れる人・営みがある土地
② オリジナルドラマ型 ── 短編の物語で感情を動かす
土地を舞台に、短編ストーリーを仕立てる。感情移入の力は、7 つの中で最強。 ただし脚本力・撮影・尺が必要で、コストは上がります。
物語の設計を間違えると“自主制作映画止まり”になる、諸刃の剣でもあります。
尺:3〜7 分/コスト:高/向く地域:予算と、語るべき物語がある土地
③ 一人称 ・体験没入型 ── カメラが“あなた”になる
カメラ=視聴者の視点。到着から、歩き、味わい、宿へ——という一日を、一人称で追体験させる。
「自分がそこを旅している」感覚を、もっとも直接的に作れます。
尺:1〜3 分/コスト:中/向く地域:ルートや周遊で魅せられる土地
④ 人物ガイド型 ── 案内役が連れて行ってくれる
土地を案内するキャラクターや人物を立てる。当社が「なかはりま」でアニメのキャラをガイド役に起用したのは、この型の一種です。
親しみと記憶に残りやすく、情報整理にも強い。 実写の人物でも、アニメでも成立します。
尺:1〜3 分/コスト:中/向く地域:回遊させたい・多言語で伝えたい土地
⑤ 五感・ASMR 型 ── 音と質感で“体感”させる
湯が注がれる音、湯気、鉄板の音、咀嚼の音。「質感」で没入させる手法です。
温泉や食との相性が抜群で、言葉がいらないぶん、そのまま多言語・インバウンドにも展開できます。
尺:15 秒〜1 分/コスト:低〜中/向く地域:温泉・食・自然の“感触”が主役の土地
⑥ 変化(ビフォー・アフター)型 ── 感情の動きを見せる
訪れる前と後で、表情や心持ちがどう変わるか。疲れた顔が、ほどけていく。
「行くと、自分がこう変わる」を見せることで、来訪の理由そのものを描きます。
尺:1〜2 分/コスト:中/向く地域:癒し・リトリート・体験型の土地
⑦ 住民・当事者の 声型 ── リアルが説得力になる
地元の人の言葉で、その土地の魅力を語ってもらう。飾らないぶん、“本当っぽさ”が段違いです。
低予算でも成立し、知名度がなくても効く、いちばん始めやすい入口でもあります。
尺:1〜3 分/コスト:低/向く地域:まず何かを始めたい土地
どれを選ぶ? ── 3 つの軸で、迷わず決める
手法選びを“なんとなく”にしないために、3 つの軸で考えてください。
・軸 1:知名度 — 名前が知られていないなら、共感で入る⑦住民の声・①ドキュメンタリーが始めやすい。
バズで認知を取ってから、②や③で深める、という順番も有効です。
・軸 2:予算 — ②オリジナルドラマは高、③④⑥は中、⑤⑦は低〜中。予算は、手法の“格”ではなく“相性”で決めるのが正解。
低予算でも、⑦や⑤は十分に人を動かします。
・ 軸 3:尺と配信先 — SNS の短尺で見つけてもらうのか、サイトの中尺でじっくり見せるのか。ここは次章へ。
オリジナルドラマの正直な立ち位置:感情移入は最強。でも、それは「予算」と「語るべき物語」と「それを脚本に落とす力」の 3 つがそろって、初めて活きます。
3 つ欠けたままドラマに手を出すと、コストだけかかって心が動かない——これが一番もったいない失敗です。
尺は「目的 × 手法」で決まる
前回の「尺」の記事を、ここに接 続します。
・15〜30 秒=認知の入口。バズ、⑤ASMR、各手法のダイジェスト
・1〜3 分=③体験没入・④ガイド・⑥変化・⑦住民の声
・3〜7 分=①ドキュメンタリー・②ドラマ。じっくり感情を動かす中尺
原則は、バズは短尺、魅力訴求は中尺。そして——1 本で全部やろうとしないこと。
短尺で見つけてもらい、中尺で心を動かす。“入口の短尺+本編の中尺”、この二段構えが、いちばん確実に人を動かします。
感情移入させる“物語”は、実は設計できます
7 つの手法のうち、①ドキュメンタリー・②ドラマ・⑥変化——このあたりは、「物語をつくる力」が成否を分けます。そして、ここが本当は一番むずかしい。
多くの制作会社は、“きれいに撮る”ことはできます。でも、「見た人の心を、どう動かすか」を設計できる会社は多くありません。
どこで引き込み、どこで感情を揺らし、最後にどう“行きたい”へ着地
させるか——これは撮影技術ではなく、物語の構造の話です。
当社の強みは、まさにここにあります。物語の骨格をつくり、感情の起伏を設計し、視聴者を「自分ごと」へ運ぶ——その脚本づくりから、ご一緒できます。
撮れる会社は多い。“物語を設計できる”会社である、というのが私たちの立ち位置です。
どの手法でも、外しては いけない 4 つのポイント
手法が何であれ、“行きたくなる動画”は、この 4 つを押さえています。
・誰の、どんな一日を描くかを先に決める — 自己投影してほしい相手(ペルソナ)を、撮る前に定める
・景色ではなく、“感情の動き”で構成する — 名所の順番ではなく、心が動く順番で並べる
・音・声・間で、余韻をつくる — 語りすぎない。沈黙や環境音が、想像の余白を生む
・冒頭数秒で世界観、最後に必ず“行き先”を示す — 感動で終わらせず、「どこへ行けばこれに会えるか」まで運ぶ
当社は、この 4 つを土台に、四季と祭りを 1 年かけて撮り下ろした文京区の実写から、キャラクターをガイドに立てたなかはりまのアニメまで、手法を目的から逆算してつくってきました。
── その動画、「驚かせて」終わっていませんか?
企画の段階で、この 6 点を確かめてみてください。
私たちにできること
「行きたくなる動画にしたいが、どの手法が自分の地域に合うのか分からない」——そこからで大丈夫です。
当社は、手法選び(企画)から、脚本=物語の設計、撮り下ろし、アニメーションまで、目的から逆算して一気通貫でつくります。
バズで名前を 売る段も、その先の“行きたい”をつくる段も、地続きで設計できます。
「うちの魅力は、どの手法なら伝わるだろう」——その相談から、ぜひ始めさせてください。

